No.27 不完全なハッピーエンド


脇道映画館 〜わたしのジブリ〜編集者/柏子見

好きなジブリ映画は数あれど、一つ選ぶとしたら「魔女の宅急便」なのかな。
初めて見たのがいつかなんてもう思い出せないけれど、
子ども心に、この作品が「完璧で終わらない」ところに惹かれていた。

作中で魔女のキキは、黒猫のジジの言葉が分からなくなり、
ホウキで空を飛ぶ方法も忘れてしまう。
それまで当たり前にしていたことが、ある日突然うまくできなくなる。
スポーツでいえばイップス。スランプともいう。

結局トンボの救出劇やらあって、キキはまた飛べるようになるのだが、
最後までジジは「ニャー」と鳴くだけだし、
ラストシーンでも、使うのはホウキではなくデッキブラシのまま。
それでも、キキはとっても誇らしげで清々しい表情なのだ。

アニメやフィクションの世界だと、最後には全部うまくいって、
めでたく収まる大団円こそハッピーエンドの定番だけれど、
未完成なハッピーエンドがあってもいいじゃないか。
すべて元通りになる以外にも、ハッピーになれる道はあるはずだ。

大人になっても、完璧とはほど遠い毎日だけど、
「おちこんだりもしたけれど、わたしは元気です」くらいのノリで気楽に生きたい。
元気があれば、何でもできる。

2021年3月10日
関谷知加

公開日/2021年03月10日



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