No.8 記憶の風化


脇道映画館 〜わたしのジブリ〜編集者/柏子見

実のところ私がジブリに対して思うところはそれ程多くはない。
というのも初期の名作と呼ばれる作品が上映されていたのは、大抵自分が生まれていないか片手で足りる年の頃で(私は1997年生まれ)、それ以上の年になってくると両親が家から車をかっ飛ばし高速に乗って1時間以上かかる映画館にわざわざ付き合ってはくれず、逆に最近のものは新しい作品が出る度にTVで取り上げられ持て囃されすぎて気が引けるので、あまり手に取る機会がないからだ。
勿論幼少期には「平成狸合戦ぽんぽこ」だとか「となりのトトロ」、父が好きな「紅の豚」をビデオテープが擦り切れてしまいそうなくらい頻繁に観ていた。
これは冗談でも誇張でもないので、付き合わされる父は若干発狂しかけていたが…。
しかし、そうしてよく観ていたなぁという記憶が残るだけで、どんな内容?とその詳細を聞かれると正直…何となく「こんな感じだったと思う…たぶん…」という酷く朧げな有様で、考察など以ての外なのだ。
好きだという気持ちや当時抱いた感情に覚えはあるものの、いかんせん記憶力が著しく悪いためその解像度は低い。タイトルで記憶の風化などと調子に乗ったが、シンプルに物覚えが悪いだけである。
それでも書かねばならない。流石にここで終わるのは文字数がちょっと心許ないので。

では物語ではなくキャラクターに焦点を当ててみるのはどうだろう?
キャラクターで言えばうぅん…。
アシタカとかハウルとか、やはり画面映えするイケメンは健康に良いなぁと思う。
アシタカの凛とした顔立ちに心惹かれない女はいないだろうし、ハウルの脆い心を思うと私は大層庇護欲をくすぐられる。
あとはやはり彼の顔の描かれた手提げカバンを持っているだけあってポルコも好きだ。
ジブリ史上最も大人なキャラクターだと言われているだけあって、あのハードボイルドさに憧れる人も少なくはないのではないだろうか。
まぁ実はポルコと同じくらいにフィオの肩には決して触れず、椅子に手を置いて写真に写るあの大男のスマートな気遣いを私は愛おしく思うのだけれど。
以上。
ご察しの通り長々と語れる程の記憶力はないのでこんな感じになる。

やはり何を語るにしてもどうにも上手くいかないし間が持たない。
であれば…これは苦肉の策なのだけれど、“ジブリ”から少し枠を広げて“宮崎駿作品”で見れば、少しは話ができる。
私はルパン三世 カリオストロの城がとっても好きなので。ご存知の方は多いだろうし「あ~ね」と思われているかもしれない。とても安直な感想だが正直観ていると最高すぎて情緒が乱れる。
冒頭のカジノ強盗からのタイヤ交換の時点でもう可愛いって何??ありがとう…その後に超弩級美女。可憐で清楚な我等が至高の初恋ヒロイン クラリスが、勇ましくカーチェイスをしながら登場する姿は筆舌に尽くしがたい。
あとタイヤをパンクさせる時の次元の狙撃何回見ても愛らしすぎはしないだろうか??「やったー!」じゃないんだよ…無邪気がよ…何歳だよ…好きだよ…。
これが2001年放送の千と千尋の神隠しの記憶が危うい女が、1979年放送のカリオストロの城の冒頭を語る珍妙な図である。
当時何歳だったかは忘れたが、父親がDVD(ビデオだったかも?)をゲオだかどこだかで借りて見せてくれた時はかなりの衝撃だった…。ありがとうルパン一味…ありがとう宮崎駿監督…。
この思いと共に生きていきます…。
できれば記憶喪失になってから、あの時の感動をもう一度味わいたい。


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余談だがゲド戦記で歌われるテルーの唄は私の大好きな詩人、萩原朔太郎の「こころ」に着想を得ているらしい。
どうにも当時はこれでひと騒動あったらしいが、1人の萩原朔太郎ファンとしてはただただ嬉しく、鼻が高いものである。

2020年10月7日
松井 歩美

公開日/2020年10月07日



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