No.1 前世と深層心理とジブリ


脇道映画館 〜わたしのジブリ〜編集者/柏子見

誰しも良く見る夢のパターンというのがあると思う。
自分の場合は「体操服を忘れて隣のクラスに借りに行く」とか「ブレーキの効かない車を運転させられる」「いきなり知らないバンドのステージに上がらされる」など、強迫観念系のネガティブなものばかりだ。

そんな中で、水に関わる夢も多い。
大体、海岸にいて超巨大な津波がやって来る夢。
映画インターステラを見た人は分かると思うけど、あのくらいの何百mもある波が襲ってくる恐ろしい夢だ。
「海洋恐怖症」というものがあるらしいが、前世で何かあったに違いない。

そんな僕がジブリ映画を見ていて、過去2回だけ、思わず「あっ!」と声を出してしまった事がある。

一回目は「千と千尋の神隠し」

油屋(ずっと「ゆや」と思ってたけど、今回は初めて「あぶらや」と読むと知った…)が出てきた時だ。
これは、小さな頃からよく夢に出てきた建物だったから。

中央に大きな吹き抜けのある回廊構造といい、極彩色の配色といい、オリエンタルでレトロな装飾といい、いつも夢に出てくる風景そっくりだった。

夢の中では、そこは旅館で泊まったり食事をしたりしていた。
たまにバリエーションで、海外だったり、貧乏くさいボロアパートになることもあった。

何故、そんな夢を見るのか分からないけれど、物心付く前に連れて行かれた場所の視覚的な記憶だけが残っているのだろうか?

 

二回目は「崖の上ポニョ」

津波の夢の話は最初にしたが、それよりもポニョが引き起こした台風の後、水の底に沈んでしまった街を悠々と泳ぐ古代魚だ。
僕の夢の中でも、海や川が出てくると必ずそこには同じ巨大な古代魚達が悠々と泳いでいる。
まさにポニョのあんな感じなのだ。

ジブリ作品の魅力のひとつは、原体験を呼び覚ます映像の刺激だと思う。
僕の場合は、夢に出てくるモチーフが恐ろしいほど正確に再現されていて驚いたのだが、
そこで重要なのは、色だと思っている、

思い出は古い写真の様に色あせていくものだが、ジブリのアニメでは現実よりも強い色彩でその記憶を掘り起こしてくれる。

トトロの昭和中期の田舎の風景や、見たことのないはずのナウシカの腐海、紅の豚や魔女の宅急便のヨーロッパの街並み、どれも現実とはちょっと違うはずの色彩が、なぜか現実よりも脳を刺激するのだ。

それは夢やDNAに刻まれた色彩の再現なのかも知れない。
意識下深くに染み込む色と映像、それがジブリなんだと思う。

 

2020年8月19日
柏子見友宏

公開日/2020年08月19日



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