16 Electric Lady Land


脇道音楽堂 〜わたしの一曲〜編集者/柏子見

湖のほとりに住んでいた頃、私はよく京都に行った。
新快速が停まらない最寄駅から電車に揺られて1時間。
五重塔がある有名なお寺の向かいにあった映画館、
見たいセレクトショップがだいたいあった藤井大丸、
ジュンク堂の脇を入った路地裏にぽつりとある古着屋。
京都には私をわくわくさせる場所がたくさんあった。
中でもひときわ楽しく、何度も行ったのがメトロだ。

その店の入り口は、京阪鴨東線(地下鉄)丸太町駅の
2番出口の階段を地上に上がり切る途中の踊り場にある。
重い扉を開けると、大音量の音楽と振動があふれてくる。
小さなフロアの一番奥、一段高くなった場所にDJブース、
左手にはポアラ付きのボトルがいくつも並ぶカウンター。

さてさて、長い長い前置きはこの辺りにするとして。
私の1曲はこの店で定期的にイベントを開いていたDJ、
Fantastic Plastic Machineが1998年に発売した
アルバムから「Electric Lady Land」を挙げたい。

曲名は知らない人でも、きっと聞いたことがあるはず。
テレビのBGMというか効果音?でよく使われている曲だ。
軟弱で、薄っぺら。馬鹿げてて、騒々しくて、愛らしい。
こんな曲たちを「Happy Charm Fool Dance Music」
というのを知ってから、そんなCDばかり買っていた。

京都で地下鉄に乗ったら、明け方の渋谷に着いた、みたいな
私の世界をぐっと広げてくれたような、狭めたような。
そんな私の思い出の1曲で、ルーツみたいな1曲として。

2018.12.12
林 知美

公開日/2018年12月17日



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