No.15 ビビタンミ


脇道くしゃがら道〜まだネットにない言葉〜編集者/柏子見

「ビビタンミ」

子どものころの鬼ごっこ。自分たちだけのルールを作った覚えはないだろうか。

僕の小さい頃にあった独自ルールは、二つ。

一つめは「ビビ」。子どもは汚いものは伝染する、という意識が強い。誰かが犬のフ●を棒で突っつくと、棒だけでなく棒で突っついたやつまで汚れた、と認識する(なぜかは知らない)。当然、そいつにタッチされると自分も汚れてしまう。その汚れから唯一逃れられる術が、ビビである。両手をチョキに、胸の前で交差させるポーズ「ビビ」には、有無を言わさずタッチを無効にさせる力がある。

二つ目は「タンミ」である。タンミは高知県の方言だと思う。原語は「タンマ」つまり「タイム」だ。タンミをコールすることで、限られた時間ではあるが、鬼から逃れることができる。

二つの独自ルール「ビビ」「タンミ」の合わせ技として発動されるのが「ビビタンミ」である。一定時間、子供社会のケガレから身を守ることができる、当時高知県の小学生だけが使えた魔法だ。

今回ネットに引っかからないワードを考えるにあたって、造語よりも実在することばを取り上げたかった。「ビビタンミ」は地域性も手伝って(ビビタンマでは1件だけヒット!)、検索結果には表示されなかった。
デジタルに飲み込まれそうなこんな世の中だけれど、小さい頃の記憶まではまだ侵食されていないようで、少しだけ嬉しくなった。

ただ、ビビタンミ、特にビビについていえば、現在ではいじめを助長する表現にあたる気がするので、皆さんご使用には注意ください

2022年11月2日
弘嶋 賢之

公開日/2022年11月02日



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