No.12 チェノシュンミン


脇道くしゃがら道〜まだネットにない言葉〜編集者/柏子見

中学生のころ、クラスメイトにしか通じない言葉が生まれることが何度かありました。

チェノシュンミン

その一つがこれ。クラスの中で眠っている人を指す言葉です。
最初は単に「シュンミン」という言葉であり、これは中学校で習う漢詩「春眠不覚暁(しゅんみん、あかつきをおぼえず)」がそのまま元になっています。誰かが寝ているクラスメイトに対して「おいシュンミン」と呼びかけたことがきっかけとなって、「あいつシュンミンしてるやん」「なにシュンミンしとんねん」というふうに、揶揄の意味合いで使われ始めました。
学校で寝ているとクラスメイトにバカにされるなんて、すごい進学校のようですが、実際には寝ているクラスメイトをおちょくりながら起こすのが流行っていたというだけです。

元々良い意味合いではなかったこの言葉ですが、いつの間にか「寝ているようにぼーっとしている人」のことも指すようになり、ほとんど悪口として使われるようになっていきます。不思議なことに、その頃には頭に「チェノ」という言葉がついており、何となく名前のような響きになっていました。
「お前はまるでチェノ・シュンミンみたいにぼーっとしてるな」誰かがはっきりそう言ったわけではありませんが、「こいつまじチェノシュンミンやん」というふうな使われ方をされており、クラスメイト中で、「いつも寝てばかりいて役立たずのチェノ・シュンミン氏」像が、なんとなく共有されていたような気がします。最終的には「お前チェノかよ」「おいチェノ」といった感じで、ファーストネーム(?)だけで、どんくさいヤツを揶揄する言葉になってしまいました。

名前をこんなふうに使ってしまい、チェノ・シュンミン氏には悪いことをしたなと思います。
この言葉はクラス替えと同時に消滅しました。

2022年9月28日
坂口 雄城

公開日/2022年09月28日



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