No.5 ブリタルジー


脇道くしゃがら道〜まだネットにない言葉〜編集者/柏子見

検索といえば、今すぐ使いたい情報を得られる取説な部分、アーカイブとしての側面、コミュニケーションなど様々な用途があります。
自分は推し活でSNS使うことが多く、好きなバンドのライブレポートを読みたい時に「日付 バンド名」で検索し恩恵を受けています。
それと同時に、昔あんな楽しそうなことがあったのか!と後の祭りにハンカチを噛む時もあり…
テーマは検索しても出てこない言葉ですが、検索して出てきたところで…今回はそういう話です。
ではまず単語から。

ブリタルジー   Google検索/0件
橋(ブリッジ)+ノスタルジー
です。

一体橋の何を懐古するのか?ポンテ・ヴェッキオ?日本一古い橋猪甘津橋か?
答えは否、 東京都渋谷区神宮前6丁目、原宿駅付近にある 神宮橋のことです。
この橋の説明を簡単にすると、90年代〜平成中期にかけてヴィジュアル系のファン(通称:バンギャ)が交流していた場所です。
コスプレ橋と呼ばれてるほどのコスプレ(主にヴィジュアル系の)で賑わっていました。
彼女たちは何をするかというと、好きなバンドの切り抜きが貼られているトランク(通称:バンギャトランク)に名刺を入れて交換、交流する。名刺には自分のライブネームや好きなバンドのロゴがレイアウトされている。ちょっと攻めた名前のため後に見返すと照れが入ったり…
コスさん(メンバーのコスプレをしている人)と一緒に写真を撮り、プリクラを撮り。
ライブツアーの最終日には自然とバンギャが集まる。朝までライブの感想を話し込んだり、ロッテリアへ移動してグッズを交換したり…
「麺バで橋」というだけで聞く人が聞けば「V系バンドマンの誕生日祝いにメンバーのコスプレをして神宮橋で集まるのね〜」と分かるでしょう。
ですが残念ながら現在ではそのような様子はありません。
まさに橋を歌っているその名も「神宮橋」も2019年に誕生しており、バンドマン側も思い入れがあったことが伺えます。

知らん単語だらけかもしれませんが海外旅行だと思ってください

人はかつて栄えていて今は…なものに対して思いを馳せますが、それのV系版は橋と言っていいでしょう。
バンギャ内では擦られつくしたテーマではありますが、こういうのは更新日が新しいことに意味がある!と思い決行。

もしかしたらL’Arc〜en〜Ciel、LUNA SEA、GLAYなどがトップ10入りしていた時代は勢いがあったけど、
今は橋うんぬんというより、ファン自体が絶滅したでしょと思われる方もいるかもしれませんが、
バンギャは橋に居ないからといって廃れたわけではありません。SNSなど居場所を変えてずっと居ます。
意外と売り上げは安定しているという結果もあります。【ヴィジュアル系のみ】専門店「ライカエジソン」でCDが売れ続ける理由
これは流行り物より濃い物を欲するバンギャならではの傾向…?と誇りを感じたり。真意はわかりませんが。

脱線してしまいましたので話を戻します。
まあいろいろ聞いたけど、広義でノスタルジーでいいじゃないか?となるのですが、実はブリタルジーにトッピングしたい重要事項がもう一つあります。

†私は橋に行ったことがない†

ないんかい!ないんです。名刺のくだりとか、さも見てきたように語っていたじゃないか…見てないです…
これら全ての情報は生き証人からの伝承+ネットの情報だけで形成されています。
なぜなら自分は90年代のヴィジュアル系が好きなのに90年代生まれのため、当時まだ歯も生えていない赤ちゃんでした。以下行き場のない思い。
昔活動していたバンドに興味がでると当然「ライブに行ってみたかった!」が一番初めに湧く感情で、その次は「橋にも行ってみたかった…」が必ずつきまといます。
身の回りにも橋に憧れをいだいている同世代は多く、原宿で降りると集会が無いのに立ち寄ってしまう現象多発。もはや世界遺産。
実際にドンピシャ世代の中には盗撮問題やファン同士のトラブルで嫌な思いをした人も居たと予想できますが、やはり憧れは憧れです。
もしかしたら平成初期のギャル文化が現役高校生にリバイバルしているのも、似たような感情かもしれませんね。

よってこのブリタルジーの概念は「今更ハマってしまい、ネットで情報は集められるものの、より体験したさが募る状態」とします。

P.s

よよ…と泣いてばかりもいられないので、最近バンギャによるチャットイベントに参加しました。かなりの人が集まり、「今ここ橋よりバンギャいる」「バーチャル橋」などとコメントが飛び交い、形を変えてみんなの心に今も橋があるんだなぁと画面越しにハートを飛ばしました。

2022年7月27日
伊藤 小麟

公開日/2022年07月27日



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