No.22 でも観てる


脇道的”妄想”YouTuber編集者/柏子見

数年前、社内外でいくつかのYouTube動画制作に絡んだことがある。

と言っても既にYouTubeは円熟期、目立つネタ・アイデアなんてそうそうあるものではない。
他と差をつけるには画面作りか。
当時はまだ、メジャーなYouTuberでも、ソフト標準装備の効果やショボいフォントしか使ってないような時代だった。

右肩には番組ロゴ、
複数カメラ同時撮影でアングル切り替え、
デザインフォントで凝ったテロップ作り。

テレビ番組のような凝った視覚的演出ができれば、見応えあるものができるのではないか。

結果、視聴数はまったくふるわず。

誰もそんなもの求めてなかった。
実際、自分が忙しくなり、配信者自身(編集初心者)に編集してもらった途端、視聴数が爆上がりしたケースも。

凝ってるのもいいけど、こちらの方が手作り感があっていいね」(実際のコメント欄より)

今でこそ、タレントや芸人のチャンネルにはテレビ局絡みのものも多くなって、凝った画面作りをよく見るようになったけど、やっぱり大事なのは見栄えじゃなくネタだった。
うん、知ってた。知ってたけどつい夢中になって忘れてた。

と言うことでやっと本題ですけども。

最近自分が一番よく見てるチャンネルは『ナミブ砂漠』
チャンネル登録者数18万人(2022.2.7現在)。

砂漠に作られた人工水場に来る動物をただ観るだけのライブチャンネル。
もちろん編集なしの垂れ流し。英語は読めないけれど、「giraffe!」「oryx!」ってチャットが盛り上がってるぐらいは解る。
先日、洪水だか何だかがあって以降メンテ期間が多くなったけど、コケてるカメラの超ローアングルや、デッキブラシ持ったおっさんがひたすら水場の泥をかき出す映像をずーーーっと眺めてるのも楽しかった。
時間によっては動物がいない時もある。真っ暗な夜だったりもする。動物いない。でも観てる。

あと、それなりにちゃんとしてる画面でよく観てるもので挙げれば『ウェザーニュース』
チャンネル登録者数66万人(2022.2.7現在)。

こちらも生配信。
天気を気にしているわけではなく、ただまったりと観てるだけ。
もちろん主題は天気予報だけど、キャスターのおねえさんのフリートークやユーザーチャットが面白い。
「気象予報士の○○さん、解説をお願いします」とキャスターが紹介すると、チャットも「○○さん、お願いします」で埋まる。
こちらもナミブと同じく誰も映ってない時間がある。ただ天気予想図があるだけ。おねえさんいない。でも観てる。

自分の求めていたものはこういうチャンネルだったのか。あんなに必死で構成して、時間をかけて映像を作っていたのに。

スタッフの雑談や電話の声が程よく聴こえてくる、オフィス内の環境動画なんかどうだろう。
自分のデスクの壁を隔てた向こう側が会議室。そこに固定カメラ置いとくのはどうだろう。
タイミングが悪いと誰もいない。ただ大きなテーブルがあるだけ。でも観てる。

2022年2月9日
小倉 賢治

公開日/2022年02月09日



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