No.21 書道教室をやめたワケ


脇道書道場 〜わたしの一筆〜編集者/柏子見

小学生の頃、書道教室に通っていた。

公民館の板の間に正座して、ひたすら墨を磨(す)り続けるのがすごく辛かった。

毎回出る、硬筆のドリル課題はちょっとだけ好きだったけど、
学校でもないのに、なんでこんなことやらされるのかが理解できなかった。

先生は、日本習字の認定講師。眼光鋭くとても怖いおじさんだった。
打たれるとヘコむ杭タイプの僕は、この厳しい先生がとても苦手だった。

そもそも友だちの誘いで始めた習い事だし、べつにやめても良かった。
しかし、やめられなかった。この先生が恐かった。
やめるなんて言ったら、怒った先生が家まで来るんじゃないかと思い込んでた。

いやだーいやだーと思いつつもやめられず、2、3年通った頃だったっけ。
テレビでアニメ『ドラえもん』が始まることを知った。
しかし、放送時間がガッツリ習字と被っている。
当時、我が家にビデオデッキなどという秘密道具はなかった。
リアルタイムで観るしかない。そのためには習字をやめるしかない。

第一回放送日、親に「今日は習字は休み」と嘘をついてズル休みした。
ドラえもんを観ている最中、先生から電話がかかってきてバレた。
親はさほど怒らなかった。
かなり厳しい先生だということを知っていたからか、
僕のドラえもん好きを知っていたからか、
「実はもうやめたい」と言ったら、わりとあっさりやめさせてくれた。

僕が書道教室をやめた理由は、ドラえもん(ドラえもんは悪くない)。
ドラえもんと言えば「秘密道具」。
秘密って言うわりに、次から次へと人前に出すよね。

2020年4月7日

小倉 賢治

公開日/2020年04月07日



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