No.11 ため息の自己紹介


脇道書道場 〜わたしの一筆〜編集者/柏子見

わざわざ一筆したためるのだから
書く内容よりも
むしろ書いた文字そのものに意味を持たせたい。

僕の33年の人生の中で最も因縁深い文字だ。

これまで自己紹介して、漢字を一発で当てた人間はいない。

一番多いのがこの「広島」
「弘島」だったり(あぁ、おしぃなあ…!!)
「嶋」が“山へん”に“島“だったり(そんな漢字ないぞ)

幼い頃は間違えられる度にきちんと訂正していたが
段々と面倒くさくなり、
中学生くらいになると既に宅配便の宛名が「広島」になっていてもスルーしていた。

そして未だに多いのが
「弘嶋です」という自己紹介に対し
「広島出身?」と、半ば食い気味に質問してくる人。

石川さんが、福島さんが、山口さんが
それぞれ
石川出身、福島出身、山口出身であるだろうか?

おおよそ想像力というものが欠如していると言わざるを得ない。

「広島出身?」
「いえ、ちがいます」という、
僕が過去何百回と繰り返してきたこの不毛なやりとりを
妻、そして娘息子たちもこの先の人生で強いられることになる。

それが、弘嶋に嫁ぐ、という事なのだ。←?

僕が広島県に行って自己紹介すると、どんな反応が起きるのだろう。

…歓迎されそうな気もするし
逆に改名を強要されそうな気もする。

海外に行ったら行ったでこれまた議論を呼ぶ名前。
僕が僕であることは、こんなにも煩わしい。

2019年12月11日
弘嶋 賢之

公開日/2019年12月11日



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