07 LOVE LETTERS


脇道堂書店 〜わたしの一冊〜編集者/柏子見

この本を読むときは、マイルールがある。

1.静かな場所で読むこと
2.部屋をすこし暗くすること
3.次の日は休みであること

ラヴ・レターズ / 1990/8 A.R. ガーニー

幼馴染のアンディーとメリッサ。2人の手紙のやりとりを綴った物語。
元は朗読劇のシナリオを翻訳したものなので、本は本でも『台本』になる。
先に朗読劇を見てから台本の存在を知ったのだが、どうしても本が欲しくて3ヶ月近く書店や古本屋、
インターネットの海を彷徨う事になるとは夢にも思わなかった。

生真面目で手紙を書くのが好きなアンディー
自由奔放で気持ちに素直なメリッサ
正反対な2人の手紙は、ドキドキワクワク、やきもき感やまどろっこしさ
そのとき自分の様々な感情と向き合って言葉にして、相手に手紙を送っていく。
相手に気持ちをぶつければぶつけるほどお互いにすれ違っていき、
一度は手紙を、相手の存在を否定して別々の道を歩んでいく。
彼らの関係は終わってしまうのかと思ったら、成人になった彼らはまた自然と手紙を書き始める。

見ているこちらはドキドキハラハラの連続で、感情の引き出しがひっきりなしに動いている状態だ。
そんななかでもどこか冷静に2人の時間の流れを一緒に楽しんでいる自分もいて、途中でどんな結末になっても最後まで見終えなきゃいけないなと思いながらページを進めていた。

手紙を書き続けながら2人は再会を果たし、別れてしまう。
返事も途切れそうになりながらも2人は自らの終わりを予感していた。
そして迎える最後の手紙。
手紙という不安定を通じてお互いはどんな関係でどんな存在だったのか、
彼らの全てを書き綴った手紙とその返事を見て本を閉じると、
2人の人生を見届けた達成感と疲労感で満たされている自分がいた。
そして後からもう彼らのやりとりを続くことはないんだという
喪失感が押しかけてきていつの間にか涙を流していた。
次の日は瞼がパンパンに腫れ上がった自分の顔を見て、
また本を開くときは、次の日誰にも会わないときにしようと鏡の前で決めて冒頭のマイルールが誕生したのだった。

50年の長い時間を経て行き交うラブレターズ

2人がどんな人生を送り、どんな結末を迎えたのか、
ぜひ1通目からゆっくりと見届けてほしい。

2017.8.9
スギモト ユキ

 

公開日/2017年08月10日



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