No.4 顧客の声 フォントの選択 ささやく刺客


脇道ちょっとGPT川柳編集者/

 自分で考えた句が箸にも棒にもひっかからなかったので、じゃあChatGPTも使用可能なことだしコイツと作るかと思ってやってみたら見事採用になったため、今後も存分にテックに依存して生きていこうと思いました、関根です。
ついでにChatGPTのより詳細な特徴、プロンプト(命令文)のコツもあわせて書ければと思います。

 今回ChatGPTが作ってくれたのが、表題の通り「顧客の声 フォントの選択 ささやく刺客」です。意味合い的には「顧客の要望に耳を傾けて要件にあったフォントを選択するも、自分の中のクリエイティブ魂(刺客)がもっとこうしたらいいんじゃないかとささやいてくる」といったところでしょうか。
技術面では「声」と「ささやく」がかかっており、「フォント」も相まって文字全体が話しかけてくるような情感、「こきゃく・せんたく・ささやく・しかく」と、「〇〇あ – く」という単語が続くリズム感も心地よかったため、生成してくれた中ではダントツの輝きを放っているなと思って採用しました。
川柳らしいうがち(揶揄や風刺、斜に構えた目線のことのようです)はやや足りない感じはしますが、元文学かぶれとしては字面の美しさも追求したかった……というのも理由の一つです。

 では、この素晴らしい句がどのようにして生まれたかということについて解説していこうと思います。

 まず、前提として、ChatGPTはあいまいな問いかけをされるのが苦手、ということを覚えておいていただきたいです。話しかければなんでも答えてくれるのがChatGPTではありますが、彼/彼女は残念ながらただのプログラムであり、藤子・F・不二雄先生のドラえもんや手塚治虫先生のアトムくんのようにはいきません。ちなみに日本でChatGPTのようなAIが親しみをもって受け入れられているのは両作品の影響が大きいと言われていますが、これは余談。

 話を戻すと、ChatGPTに話しかける際には「あいまいな問いかけ/お願い」より、「はっきりとした命令/要求」の方が好ましい結果を得られるということです。時折「ChatGPTを使ってみたけどつまらなかった/ウソをつかれた!」という風に書いている記事を見かけますが、添えられているプロンプト(命令文)を読むと、大抵そういった「あいまいな問いかけ/お願い」をしているため、望むような答えを得られていないことが多いです。ChatGPTはあくまで入力された内容に対して文章を生成するだけのAIであり、計算機のように正しい答えを導き出してくれるものではないということには注意が必要です。

 長くなりましたが、これらの前提を踏まえてどんな風にChatGPTを活用して川柳を作ることができたのか、その一部始終をお見せします。なお、今回はChatGPTに課金することで使える最新モデルのGPT-4を使った内容となりますので、無料で使える範囲のChatGPT(GPT-3.5)で試行された場合は結果が変わる可能性がありますが、それでも十分使えるテクニックだと思います。

1.まず、会話における前提条件を固める

 最初に「あなたは新進気鋭の川柳生成AIです」とChatGPTに役割を与え、その後に川柳の定義について語らせます。なぜ定義を語らせるのかというと、ChatGPTの学習内容に偏りがないかを確かめるためです。ChatGPTは膨大なデータを学習したAIではありますが、得意とするのはやはり母語である英語やその周辺の文化圏だということ、学習データが2021年9月ごろまでのものであることを加味すると、その頭脳に全く偏りや間違いがないとは言い切れません。よって、川柳のような日本独自の文化を取り扱う場合、あらかじめChatGPTの中での認識が自分(命令側)とズレていないかは確認しておいた方がよいでしょう。もし訂正があるなら、それを命令文に追加して修正することもできます。

 今回は、語らせた定義が合っていると感じたのでこのまま進めることにします。

2.テーマを与え、とりあえず作らせてみる

 次に、早速テーマを与えて作らせてみることにしました。元のテーマ「ネガティブをクリエイティブでポジティブに」をそのまま入力してしまうと、かなりあいまいな命令になってしまうので、少し具体的に「ネガティブな事柄をクリエイティブの力でポジティブに変えていく」というテーマとして命令しました。また、クリエイティブという言葉もあいまいなので、「グラフィクデザイン、DTP、Webやアート表現」として定義しました。

 結果、テーマ通りの川柳を作ってくれました!

 しかし、作ってくれたものはストレートな表現が多く、川柳によくある少しひねった表現や、ケレン味が足りないように思います。また、アート方面に偏っているような感じもします。こういった「足りない箇所」を具体的に分析して、次はもっといろんな命令を追加していきます。

3.修正点を明示し、再度生成させる

 こんな感じで、修正してほしい箇所を具体的に伝え、生成させる数も10句から20句に増やしたりして、どんどん精度を上げていきます。無茶な命令や度重なる修正にも素早く答えてくれるのはさすがAIといったところです、ありがとう!

 そして時には、生成している内容に偏りを感じたので、それぞれの言葉を再定義させて方向性がずれていないか確かめる、というようなこともしました。

こうすることで、1でやったように認識の齟齬がないかの確かめ、さらに訂正を行っての再定義ができるように仕込みができます。こうやってあれこれお世話して試行錯誤しているのが一番楽しい時間かもしれません。

4.ChatGPTが川柳を読む際の立場を明確にして再度生成させる

 いろいろやっているうちに、ChatGPTから以下のような問いかけがあったので、

 こんなふうに、「ネガティブ」を具体的に定義し、ChatGPTの立場も明確にした上で川柳を作らせてみました。

 最終的には、これが一番うまくいきました。ChatGPTの立場も明示して生成させることにより、彼/彼女が擬似的にその立場になったつもりで詠んでくれるので、今までより具体性のある川柳を生み出してくれるようになりました。

 この皮肉っぽい感じがまさに川柳、という感じです。面白い!

5.まとめ

①ChatGPTにはあいまいな問いかけではなくはっきりとした命令をする

②ChatGPTの中での定義を語らせると訂正もできるし覚えていてくれるので効果的

③川柳を作らせる場合はテーマを具体的に、ChatGPT自身の立場も明確にすることでより良いものが生まれる

 ということで、上記のような経緯で140句ほど詠ませ、その中から選定したものが表題の川柳です。そもそも英語の方が得意なChatGPT、5・7・5のルールを守って生成しているものの方が珍しいといった有様でしたが、そこは無理を言っても仕方ないこと。割り切って楽しくたくさん生成させることで、素敵な句を生み出してもらうことができました。
仕事で使うのはまだちょっと不安……という皆様も、これを機に触れてみてはいかがでしょうか。健気なChatGPTがかわいく思えてきたら、あなたもお茶の水博士です。

2023年7月12日
関根 茉樹

公開日/2023年07月12日



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