No.19 掃除の可能性
脇道未来予想図編集者/

はじめてルンバを知った時、「なんかすごい未来っぽい」と感じたのを覚えています。
今までは当たり前に自分でやっていた掃除を、ロボットが自動でやってくれる。
いざ使ってみるとちょっと不満もあったりしますが、50年後の未来にはどのくらい進化しているのでしょうか。
床はもちろん窓や壁、風呂、トイレ、キッチンまでロボットが隅々まで綺麗にし、
そもそも家自体が汚れを弾く特殊な素材でできている。そんな未来も割と現実的な気がします。
「掃除」という行為が不要な世界。
そんな世界では、人類が蓄積し磨き続けてきた掃除のノウハウは全て過去の遺物と化し、忘れ去られるのでしょうか。
技術進化や社会の変化の中で実用性を失ったものが、全て廃れていくとは限りません。
車があっても人は健康維持のためにランニングを続けますし、平和な世界でも格闘技はスポーツとして人気です。
廃墟でさえ観光地として注目されていたりします。
掃除という行為も、同じように新たな形で受け継がれていく可能性は十分にあります。
実用的な技術ではなく、精神性や肉体の修練、あるいはエンターテイメントとして。
そう、新興スポーツ競技「掃除道」の誕生です。
全国の掃除道場には老若男女の生徒が集い、美しく効率的な雑巾がけのフォームや
箒とチリトリを用いた華麗なコンビネーションを学ぶことでしょう。
競技会も開催され、選手たちは乱れた部屋をいかに美しく整えることができるかを競います。
最終的な部屋の清潔さや掃除完了までの時間、所作の美しさなど、項目別に10点満点で採点され、
試合後には選手同士がお互いを称え合い「ナイスクリーニング」と一礼。
さらに掃除道は国際的なスポーツへと発展するかもしれません。
五輪競技として採用され、テレビ中継では解説者が「〇〇選手のモップ捌きはまるで芸術のようです」と熱を込めて語ります。
観客は息をのむような回転モップ技に歓声を上げ、会場は拍手で包まれるでしょう。
掃除という営みが、実用的な必要性を超えて、精神性や美を追求する「道」として未来に受け継がれる可能性。
日曜の午後、ルンバの掃き残しをコロコロで掃除しながら、一人そんな未来を妄想したのでした。
団体戦の様子
2024年12月11日
坂口 雄城
公開日/2024年12月11日